南房総に移住を考えている方が挙げる心配事のひとつに「安心して医療が受けられる環境が整っているのか」ということがあります。そんな心配を吹き飛ばしてくれる診療所があります。南房総市千倉町大川にある七浦診療所。私も移住後間もない頃からお世話になって6年半経ちました。

通い始めた頃は、小ぢんまりした街の診療所という雰囲気でしたが、今はすっかり様変わりしました。大胆にリノベーションされた廃校(旧七浦小学校)の中に診療所があります。そこにあるのは診療所だけではありません。介護施設、病児保育、生活用品を買える売店まで…七浦プロジェクトです。日本初の形態で事業を展開する、ご自身も移住者の田中かつら院長にお話を伺いました。

ドクターご自身も移住者

就労継続支援B型事業所シェアト 井上一郎(以下 井上):本日はコロナ第3波の中で取材を受けていただきありがとうございます。早速ですが、先生が南房総で開業しようと思ったきっかけから、教えてください。

田中先生:私は東京生まれの東京育ちで、最初は大きな病院勤務が多かったんですよ。だから、いつかは地方で開業して、地域密着の医療をしたいなと漠然と思っていました。ご縁があって、南房総で開業することになりました。ここは開放的で、移住者がとても溶け込みやすい土地柄だと思います。

七浦プロジェクト

井上:小学校の跡地に医療・介護・病児保育・生活の関連施設を建てた発想は凄いですね?

田中先生:七浦プロジェクトですね。例えば、ご高齢の方が診察にやってくるとしますよね。「この人は介護サービスが必要なんじゃないかしら?」と思ったときに、診療所の隣に居宅介護支援事業所、リハビリテーションセンターがあったら、便利じゃないですか?

それに、お子さんが急な発熱でお母さんが仕事に行けないのも何とかしてあげたい。「病児保育所があると良いよね」って。

この辺りはコンビニもないでしょう? お惣菜や日用品を売っているコーナーがあると便利だろうなと。あると良いなって思ったら、自分たちで作ってしまおうと(笑)

これからのこと

井上:先生が今、あたためている計画があったら、教えていただけますか?

田中先生:通所の介護サービスを準備中なのと、宿泊型の介護サービスについても考えています。それらが揃うと事業としてワンストップの形態が整うと思うので。

井上:コロナの第3波の最中ですが、南房総市民の対策についてはどのように感じていらっしゃいますか?

田中先生:コロナに関して南房総市民は自分達なりにできる対策をきちんとやれているから、罹患者が少ないように思います。地域の人々に支えられてのプロジェクトですので、自分より年上の住民の方を全員看取る覚悟でやっていきたいです。

まとめ

インタビューの中での先生のお言葉です。「ある年、隣の畑の手入れをしていたおばあちゃんが亡くなったの。もう次の年はおばあちゃんの畑は草がぼうぼうになっている。この土地は高齢化率も高くて、人は減る一方なの。この事業をやって地域の人の暮らしやすさを助けても、人が増えるかどうかはわからない。でも、やり続けなきゃね」笑顔とともに師走の夕暮れに地域で暮らす意気込みを込めた一言をいただきました。

七浦診療所
https://nanaurashinryojo.com/

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