毎日普通に食べている主食のお米。和気の環境が育み、我が子のように大切に育てられた珠玉の一粒があります。和気町では、東京ではまず見られない、珍しくそして自然に優しいお米が当たり前のように売られているのです。

悠々と流れる川に雲海のかかる山々
「景色がごちそう」和気町

まずは筆者が今住んでいる町、岡山県和気郡和気町をご紹介したいと思います。

電車は山陽本線、のぼりくだり各平均1時間に2本程度。姫路駅と岡山駅のちょうど真ん中くらいの場所です。和気では最近移住希望者が多く、移住推進員の方によると、移住相談は年間約500名、移住の下見に来る人数が300名、移住者が80名ほどとのことでした。家族で移住される方に手厚くサポートをおこない移住者コミュニティがしっかりしているのも、和気町の特徴の一つです。

和気の良いところはなんといっても、プチ都会であって田舎であるところ。スーパーが3つ、銀行が1つ、100円ショップが1つとコンビニが2つ、それぞれ和気駅から徒歩圏にあり、生活に困ることがありません。悠々と流れる吉井川、そして雲海のかかる山々。春は桜とそして藤の花を愛で、秋にはこうべを垂れる稲穂を楽しむ。その美しい景色は「和気は景色がごちそう」と言う移住者の方もいらっしゃるくらいです。

今回はそんな和気町の中でも、珍しいお米を作られている農家さんを2件、ご紹介したいと思います。

自然農(不耕起・無施肥・農薬不使用・除草剤不使用)の古代米

最初にご紹介するのは、和気で自然農を営まれて9年の岡本さんご夫妻。

初めその稲を見たとき、同じ田んぼに植えてある稲の「色が違う」ことに気づきました。一種類を大量に作るのではなく、多品種少量でお米を育てられています。まさに農園の名前通り、彩り豊かで見ても楽しい田んぼです。それだけではなく、周囲の慣行農法のお米に害虫が大発生した時も、岡本さんの田んぼは被害に合わなかったそうです。自然に育った元気なお米のパワーを感じました。

以前「世界最後の日のための種子」という本を読んだ事があるのですが、大量生産で作られた農業生産物は、遺伝子的な多様性がなく、一度伝染病にかかると全滅してしまうと読んだことを思い出しました。彩はまさに多様性のある農園です。

実は今回、稲刈りのお手伝いとして参上。初めて鎌を使い、膝を屈めて稲を根元から切り取ります。「これってハードなスクワットだな…」と思いながら刈り取りを進めます。不耕起栽培の田んぼは、水路にしている箇所以外は長雨の後でもぬかるんでいません。そのまま踏み込んで田んぼに入って行くことができました。そして、根元にはたくさんの雑草が生え、クモ、バッタ、カエルなどの虫たちがそこで共生しています。まさに自然の営みの中で育った、環境に優しい健康なお米です。

お昼には、彩の誇る天日干しの古代米が4種類も入った、お米のお料理を頂きました。白いお米に散らばる色とりどりのお米、ほおばると口に4種類の食感が広がります。ついどんぶり2杯おかわりしておひつを空にし、ご家族分の米が私の胃袋に……(大変申し訳ありませんでした)。ごちそうさまでした。

岡山では、自然農をしている方のネットワークが非常にしっかりしてるそうです。自然農を始めたくても、一人ぼっちで始めるのは大変なこと。でも、岡山ではその一歩を踏み出すための仲間がたくさんいます。まさに自然農を始めるなら岡山と言っても過言でないのではないでしょうか?

岡本さんの農園では、自然と一緒に作る自己流栽培をされています。とかく自然農は原理主義に走りがちですが、地球と自分の中の自然に耳を傾けて、稲と一緒に共生する気持ちが、この優しいお米を作り出していると感じます。

今回筆者が食したおすすめ農産物は、農園の名前を冠した「彩り米」。多種少量で手間ひまかけて生産されている4種の天日干し古代米玄米(黒米、赤米、緑米、香り米)を、絶妙な割合で配合しています。白米や分づき米に1合に大さじ1杯ほど混ぜると、彩りよし、食感よしで食欲増進に繋がりますよ。フェイスブックからご購入頂けます。自然に任せた農産物は数が限られますので、ご注文はお早めに!

Facebook: エコファーム彩―sai お問い合わせは、携帯電話番: 09075436656(岡本敬三)まで

微生物が育む、農薬不使用で栽培された朝日米
岡山が誇る幻のお米

私が和気町に来て初めてスーパーで買い物をしたとき、関東ではまずお目にかかれない品種のお米を売り場に見ました。現在一般的に流通している「コシヒカリ」のひいおばあさんにあたり、もともとは日本のお米の在来種の一つである「朝日」です。

コシヒカリに比べて背が高く、そして晩稲種。収穫時に稲が落ちやすく、なかなかに手間のかかるお米。他の品種に比べ粘度は低めで、他のお米より長い時間太陽にあたるためか、しっかりとした甘みのあるお味。関東のスーパーでは主にコシヒカリ・あきたこまちなどが並ぶ中、この朝日米のような珍しいお米が普通に売られているなんて、岡山すごいな!と驚いた筆者でした。

この朝日の稲刈りに、「おかやま野菜倶楽部」さんのお誘いで参加して参りました。子供達が走り回る稲刈り、そんな風景見たことがあったでしょうか?和気の移住支援員であり、またご本人も東京からの移住者である吉永さんは、「子供達が、未来にもこの田んぼでお米を作って欲しい」という願いから、毎年子供達と一緒に稲刈りをしているそうです。田んぼの周りには水路があり、子供達はびしょ濡れになりながらザリガニやメダカを採っていました。

こちらの朝日米は、微生物が育む田んぼで健康的に育っています。たくさんの雑草と共生していることがその証。今回はコンバインを使った稲刈りでしたが、この雑草がコンバインに詰まって、なんどもそれを取り除く様子を拝見しました。だから慣行農業でお米を育てるときにはよく除草剤を使うのだなと、田んぼに入ってみて初めての発見をしたのでした。

朝日は普通のお米より手間がかかります。晩稲であり背が高い、すなわち台風の影響を通常のお米より多く受けやすく、そして高さがあるので倒れやすい。挙句に、稲刈りをしていても地面に落ちるたくさんのお米、落稲が多いのを実感しました。そんな朝日を、さらに農薬を使わず育てる事の大変さ。思わずこの朝日米が愛おしくさえ思えてきました。微生物を使った田んぼはパワーが違うそう。食べる人に生きる力を与える朝日米です。

販売を担当しているのは、おかやま野菜倶楽部さん。微生物が生きている、農薬を使わないおいしい朝日米は、残念ながらまだ少量生産のため、現状外への販売はできていないそうです。今後もっとこの朝日を作ってくださる自然栽培の農家さんが増えることを祈っています。

まとめ

以上、和気で作られているおいしいお米をご紹介致しました。おいしい食べ物は、まずは健康な田んぼからと思います。筆者は、重度のアトピー、そして化学物質過敏症を発症して、生活が一転した経験を持ちます。この病と立ち向かうために、私の体にはまず健康なお米が必要でした。

お米は日本人の主食です。こんなに手間ひまをかけて美しい田んぼを整備し、そして、丁寧に刈り取られて食卓に上がるまで、繊細とも思える取り扱いをしている国は他にありません。まさに日本人のソウルフードだと思います。

和気では、丁寧で美しい田畑を作る人たちと、そこから生まれる優しくておいしいお米があります。和気だけの特別なお米、ぜひ堪能してみて下さい。

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