白浜海洋美術館は千葉県最南端の町、南房総市白浜町にあります。決して大きくはありませんが、1965年8月に柳八十一・和子夫妻が創設した千葉県で一番古い、ユニークな美術館です。房総で生まれた、漁師が大漁を祝うときの祝い着「万祝(まいわい)」を中心に、江戸時代から大正にかけての、海に関わる工芸品を全国から集め、展示しています。

江戸時代の漁師の晴れ着「万祝(まいわい)」

かつて大漁のときに船主や網元が漁師に配った祝い着、万祝。

黒潮を表す藍色の半纏で、多くは鶴亀、宝船、鯛など縁起の良いものが多色染色で描かれています。白浜海洋美術館で所有する万祝には、「浦島太郎物語」をモチーフとした絵柄が多く見られます。描かれているのは、浦島太郎が竜宮城からお土産をもらって地上に帰る、ハッピーエンドの物語。背中部分と裾いっぱいには物語の絵柄が、背中の上部には家紋や船印・船名が描かれています。

現在は贈ったり着たりする習慣はなくなりましたが、白浜町の小戸地区では、屋号(やごう)の入った万祝が各家庭で大切に受け継がれています。ここでは今でも、3年に1度の「初午祭り」に、男性が法被(はっぴ)の代わりに万祝を身にまといます。

本職は陶芸家

現在の柳善夫館長ご夫婦の本職は陶芸家。2006年に白浜へ来るまでは、三重県伊賀市の「都美恵窯(つみえがま)」を拠点に活動していました。白浜へ移住後、しばらくは白浜海洋美術館の運営に専念。その後10年かけて白浜町滝口で「都美恵窯」を再開しました。

館長の号は、夢也(ゆめや)。彼が作る骨壷は青山(せいざん)と名付けられ、作品は館内で展示販売されています。骨壺の他、白浜の海女(あま)をモデルとした海女人形などが並んだ展示室は、少し不思議な空間に感じられます。

この美術館では、常設展示以外に陶芸教室も開かれています。また、観光で訪れる方や、子供会のイベント向けにビジター体験教室もありますので、興味のある方はぜひ、お問い合わせを。残念ながら現在は新型コロナウィルスのため、休止中です。(2020年12月現在)

見上げた先は大きな灯台

南房総最南端の「野島埼(のじまざき)灯台」は日本でも2番目に古い洋式灯台で、1869(明治2)年にフランス人技師ヴェルニーの設計により作られました。関東大震災のときに一度倒壊し、現在の灯台は、1925(大正14)年に建てられました。

螺旋(らせん)階段を上って展望台に登ってみましょう。眺めは最高。天気の良い日には遠く伊豆大島まで望めます。

灯台の周りは公園として遊歩道が整備されており、20分ほどで一周することができます。大きな岩の上に置かれた「最南端のベンチ」。ここからは、最南端の朝日や夕日を眺めることもできます。すぐ近くに房総最大級の祭り「海女祭り」が行われる厳島神社があります。お見逃しなく。

まとめ

白浜に嫁いで27年になりますが、白浜海洋美術館も野島埼灯台も子供と一緒に行ったきり。詳しい歴史については知りませんでした。今回久しぶりに訪れて改めて学ぶこともあり、より身近に感じられました。白浜海洋美術館は個人経営ということで、維持管理が厳しいとお聞きしました。現在、労力・知力の提供をしていただける「サポートメンバー」を募集中です。この美術館に心惹かれた方は、ぜひご協力ください。

白浜海洋美術館
http://kaibi.art.coocan.jp/

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