ご存知ですか?南房総には日本で唯一、料理の神様 磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)を祀る高家(たかべ)神社があります。料理関係者だけでなく、すべての人間の生活に関わる料理の祖神が祀られている神社は日本に一つだけ。

茅葺き屋根を持つ美しい拝殿がある神社で、年3回奉納される庖丁式は、TVでたびたび放映されることもある有名な儀式です。その神社の禰宜(ねぎ:企業での専務に当たる役職)を務める高木 幹人(みきひと)さんにあまり知られていない高家神社の面白いところを教えてもらいました。

高家神社で奉納される「庖丁式」の作法は、全部異なるって本当ですか?

高家庖丁会による庖丁式 ©南房総市

「高家神社の例祭日で年3回、庖丁式を奉納します。3回とも異なる流派の方々が奉納してくださるのですが、流派によって動作が異なるため同じようですべて違います。

10月は『四条真流会』、11月は『四条流石井派一門』。こちらの歴史は長く40~50年ほどお付き合いがあります。5月は『たかべ庖丁会』、地元の方々で結成して、10年ほどになります。本殿への階段を上がると、左右それぞれに庖丁塚があるのですが、異なる流派によって建てられたので、2つあるんですよ。

ここだけの話ですが、地元の千倉町谷津区の『高家学ぼう会』などが主催する『梅見会』が2月の第4日曜日に開かれています。そちらでも庖丁式が奉納されるので、例祭日で見逃した方にはおすすめです。」

例祭日
5/17 春季例祭・庖丁式奉納
10/17 秋季例祭・庖丁式奉納
11/23 月次祭・庖丁式奉納

茅葺き屋根の周囲にぐるり。あの「テグス」は何のため?

「今の屋根はJR財団さんなどからの助成金で、平成25年にほぼ全葺替えし、4年ほど経っています。

よく見ると屋根の周りにテグスが貼ってあるのですが、鳥よけのためです。自然風雨より鳥による被害のほうが大きいんです。自然物ですので、中にいる幼虫を食べたりもしますが、カラスなどはいたずらでごっそりと抜いてしまうこともあります。よく見ると少しずつ毛羽立ってきているので、10年ほどで補修が必要かと考えていますが、なかなか(金銭的に)難しいですね。地元の氏子さんからは茅葺き屋根反対の声が多いです。

茅葺き屋根の本殿は南房総の観光資源でもあります。そこに銅板をかぶせたり、瓦葺きに変えるのではなく、景観に映える今の姿を維持するためには、地元の方々の負担にならないようにすることは、とても重要と考えています。」

自然素材を使った茅葺き屋根。美しさを維持する「取り組み」とは?

平成25年 葺替え工事 ©南房総市

「最初の葺替えは平成12年。南会津(福島)の茅を使用して葺替えをしたのですが、育った風土と異なる環境で使用すると長持ちせず、2~3度補修をしたのですが、意外と傷みが早かったです。2度目の今は、御殿場(静岡)で丁寧に手入れされ、関東の茅葺き文化財などに使用される上質な茅を使用し、文化財の仕事を多く手がける『茅葺屋根保存協会』という会社にお願いしました。

(茅葺き)維持には風通しや日当たりの良さがとても重要ですが、やはり風土の似た場所で育った茅を使用したほうが長持ちするようです。

高家神社は神明(しんめい)造りという、神社の造りとしては一番簡素でありながら宮らしい、反りのないきれいな造りをしています。茅葺き屋根の勾配や、しっかりと切りそろえられた厚みが見どころで、その維持は難しいですが、この美しい姿を永く残していきたいです。」

まとめ

「南房総は料理の神様いわれの土地。神様がそこにお鎮まりになるのに非常に適している土地です。良い漁場にも恵まれ、農作物もよく実る房の国、非常にいい土地。そこに我々人間も一緒に住めるのは、幸せだと思います。」と、最後にそう語ってくれた高木さん。高倍神社を合わせ32の神社で活躍されていますが、まもなく禰宜から宮司(会社での社長にあたる)へと役職が変わられるそうです。残念ながら取材当日、ご本人のお写真はNGでしたが、例祭日やイベントなどで凛々しいお姿を見つけることができると思います。

高家神社
住所:千葉県南房総市千倉町南朝夷164
問合せ先:高家神社社務所 0470-44-5625