千葉県市原市の南部に位置する自然豊かな場所、田淵。2020年1月17日に地質年代「チバニアン」誕生のニュースが日本中を駆け巡ると、全国から見学者が殺到しました。

何がそんなにすごいのか?今さらながら興味を持った私は、「チバニアン」命名の根拠となる地層を長年研究する元高校地学教師、堀内正貫(まさつら)さんと共に現地へ行ってお話を伺いました。今回はその時の様子をみなさんにお伝えします。

国の天然記念物にも認定!そもそもチバニアンって何?

「チバニアン」はラテン語で「千葉時代」の意味。地質年代の名称で、77万4千年前~12万9千年前の期間のことを指します。地質年代に日本の地名がつくのは、これが最初で最後だろうと言われています。2018年には国の天然記念物にも認定されました。

「この地層の白い線から上がチバニアン、下はカラブリアンという地質年代です」と、堀内さんの説明を現地で受ける私。専門家に説明をしてもらわないと、ただの崖にしか見えません。

「この白い線は火山灰の層で、77万4千年前に御嶽山(長野県・岐阜県)が噴火した時の火山灰です。火山灰が風にのって運ばれ、積もって白い地層になっています。」

その火山灰の基底に、2022年5月、国際標準模式地を示す金色の杭「ゴールデンスパイク」が設置されました。
火山灰のおかげで年代がはっきりと特定でき、火山灰を挟んだ上下の層を調べたところ、地磁気が異なることが判明したのです。

地磁気が異なるって何?S極とN極がクルっと入れ替わったの?

方位磁針はどの場所でも必ずN極は北を指しますが、それは地球自体が大きな磁石のようになっているからです。その地球の性質を「地磁気」と言います。現在、その地球自体の大きな磁石は、地球の北がS極・南がN極の性質を持っているため、北のS極に引かれて磁石のN極が北を向きます。

しかし、大昔、その地磁気が逆転していた時期がありました。地磁気逆転と言っても「明日からS極とN極がクルッと変わります」ということではなく、数千年という長い年月をかけて逆転しました。

この現象は、46億年前に地球が誕生してから今日まで、何百回もあったことはわかっていますが、その詳細は不明です。何らかの理由で、地球自体の大きな磁石の性質、S極とN極が逆転した。その事実がわかる証拠が、市原市田淵にある、この地層なのです。

地層は語る!地球のロマンに想いを馳せて

大昔は海の底だった市原市。「流れる水の働きや火山の噴火によって海の中に地層ができ、それが大きな力によって地上に押し上げられ、川の流れで削られて崖のような露頭(ろとう)となった」と堀内さん。

田淵の露頭も養老川沿いにあります。取材をした2022年12月上旬は、養老川に沿って広がる紅葉も美しく、豊かな自然を満喫しながらの見学でした。地層近くの「田淵不動滝」や「二五穴(にごあな)」と呼ばれる素掘りトンネルも神秘的。

今は見上げているこの地層が大昔は海の中にあっただなんて、とても不思議な感覚です。地層は、過去と未来を結ぶ壮大な物語のように感じました。

まとめ

見学の際は、勾配が急な箇所や足元が不安定な場所を歩きますので、トレッキングシューズや長靴を忘れずに。また、駐車場の一角には「チバニアンビジターセンター」があり、わかりやすく解説した展示と映像の放映を行っています。

理解を深めるには、チバニアンガイドによる案内もおすすめです。※要予約
2026年度には、建築家の隈研吾氏が設計する「チバニアン」案内施設がオープン予定。まだまだ面白くなっていきますよ。

「チバニアンビジターセンター」
所在地:〒290-0546千葉県市原市田淵1157番
開館時間:午前9時~午後5時(4月~9月)、午前9時~午後4時(10月~3月)
休館日:毎週木曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
電話/FAX:0436-96-2755
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