池を望む大きな窓から自然光が入るこのモダンな建物が、実は市営の公共アトリエ施設だと知ってびっくり。こんな場所で、ものづくりのワークショップを開催できたら素晴らしいだろうなぁ、と妄想しつつ。

今回筆者は、地域の移住情報サイト「LOHAI」のさすらいワーク特派員として岡山県赤磐市を訪れ、現代美術作家/アートディレクターの伊永和弘さんにインタビュー取材をさせていただきました。

伊永さんは、赤磐市内の観光文化施設や学校、公園などを会場にした「あかいわART RALLY」というアートイベントを2010年より3年ごとに開催しています。2016年9月に開催された第3回目のイベントでは、市内11カ所の会場にさまざまな作家の作品を展示しつつ、来場者が作品づくりに参加できるような企画もあり、1万人を超える来場者があったそうです。


そのアートイベントのお話を伺っていたらどうしても会場を見てみたくなって、今回の旅をコーディネートしていただいた赤磐市役所の方に相談し、急遽実際の場所を見に行くことに。なんと、伊永さんご自身が案内してくださいました。

赤磐市についての概要

「あかいわART RALLY」の会場について書く前に、まずは赤磐市がどんなところなのかをちょっとご説明します。赤磐市は岡山県中南部に位置し、桃やブドウの栽培が盛んな地域。2005年に赤磐郡山陽町・赤坂町・熊山町・吉井町の4町が合併し、市となりました。

市制10周年記念事業の一環として赤磐市で制作された『種まく旅人 夢のつぎ木』という映画では、桃農家を舞台に高梨臨演じるヒロインが新種の桃栽培に挑戦する姿が描かれています。赤磐市内で撮影が行われ、地元の桃畑のほか、赤磐市役所、赤磐市中央公民館、室町酒造、JR熊山駅、竜天天文台なども映画の中に登場しています。今回の旅の間に、ロケ地めぐりツアーに参加させていただき、これらの場所も訪れる機会がありました。

また、今回筆者が宿泊した、赤磐市の公共施設である「赤坂適塾」も、ロケハンに訪れた監督さんやプロデューサーさんが宿泊されたそうです。まさに、赤磐市の街全体を使って、映画制作が行われた感じですね。

赤坂適塾について

赤磐市の伝統家屋を活用した「赤坂適塾」は、都市住民と地域住民の交流活動の拠点として整備され、宿泊もできる施設です。この施設名は、幕末に福沢諭吉などの知識人を数多く輩出した蘭学塾「適塾」にちなんだもの。館内の研修室にはその「適塾」の創設者である緒方洪庵直筆の書簡やゆかりの品が展示されています。

簡易宿泊室は最大12人が泊まることができ、料理がつくれる食堂や、大きなお風呂の設備もあります。ひとりで宿泊するには、ちょっと広すぎるくらい。この施設では、岡山県外から赤磐市への移住を検討している方を対象に「おためし暮らし」を体験することもできます。

今回、伊永さんとのインタビュー取材も、この赤坂適塾で行いました。

こうちゃんのアトリエとカフェ

インタビュー後、伊永さんにご案内いただいて、赤坂敵塾から車で4分くらいのところにある「こうちゃんのアトリエ」を訪れました。

ここは、「あかいわART RALLY 2016」で、「こうちゃん」こと宇田光志さんによる公開制作が行われていた場所です。中を拝見させていただきましたが、細かく描きこまれているペン画作品がいくつも展示されていました。もともとここは、歴史のある郵便局の建物だったそうです。窓口の仕切りや、アンティークな調度品や公衆電話など、レトロな雰囲気の残る素敵な空間でした。


隣接する母屋のとんぼ邸では、2017年2月にオープンしたばかりの「ほっこり茶房」が営業中。古民家を改装した畳の部屋で、こたつに入ってまったりと休憩。「ほっこり盆」という、飲みものとプチサイズのお菓子がお盆に載った、かわいらしいおやつセットをいただきました。

ほっこり茶房は、営業している曜日が限られているので、確認してから訪れることをおすすめします。

大苅田読書公園

続いて訪れたのは、赤磐市大苅田にある「大苅田読書公園」。ここは、本を持ち込んで散策や読書が楽しめる公園です。冒頭でもご紹介した公共のアトリエ施設はこの公園の中にあり、「人魚館」と呼ばれています。

大苅田池に面した大きな窓から、明るい光が差し込むモダンな雰囲気の建物です。「あかいわART RALLY」では、作品展示やミニコンサートが行われた会場です。


赤磐市の施設紹介ページには、「赤磐市大苅田読書公園 デンリル・ハウフル・フス」という名前で紹介されています。「デンリル・ハウフル・フス」とは、デンマーク語で「人魚姫の像」を意味する「Den lille Havfrue」のこと。デンマークのコペンハーゲンにあるブロンズ像は有名ですね。「人魚館」からも見える大苅田池にも、人魚姫の像が建てられています。

公園は自由に散策できますが、こちらのアトリエ施設は通常は施錠されているようですので、利用方法などは赤坂公民館窓口へ。

陶芸家 芝眞路さんのご自宅兼工房へ

最後に、「あかいわART RALLY」にも作品を展示した、陶芸家の芝眞路さんのご自宅兼工房を訪れました。筆者は学生時代に陶芸彫刻を専攻しており、陶芸の工房はぜひ拝見してみたかったので。

一階のダイニングキッチンを通り抜けると、そこに広々とした陶芸工房スペースが。自宅に大きな陶芸窯がある生活は、とてもうらやましいです。2階にはちょっとした講演会もできる展示スペースもあり、芝さんのご自宅はちょっとしたサロンのような雰囲気で自然と人が集まってくるとのこと。つい最近も、海外からの滞在客がいたそうです。

とても素敵で、居心地の良い空間でした。こんな工房を、いつか自分も手に入れてみたいと思いました。急なご連絡にもかかわらず、快く迎え入れてくれた芝さんに感謝します。ありがとうございました。

最後に

赤磐市には、郷土資料館はあるけれど、美術館は無いと伺いましたが、こうして見ると街のあちこちにアート的なスポットがあり、作家さんも創作活動をされていらっしゃいました。

「あかいわART RALLY」の活動もとても面白そうなので、ぜひ次回開催されるときは参加してみたいです。できればもう少し長い期間、創作活動をしながら「おためし暮らし」の移住体験もしてみたいです。

今回の旅をコーディネートしてくださった赤磐市役所の金谷さん、そしてお忙しい中インタビュー取材だけでなく赤磐市のアートスポットを見せてくださった伊永さん、ありがとうございました。

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