好きな時間に好きな場所で働く。そんな自由気ままなライフスタイルを追い求め、フリーランスライターとして生きることを決めた私。

「恋する旅ライターかおり」と本名「小林香織」の2つのライターネームを使い分けながら、旅・恋愛を含めたライフスタイルや人物インタビューなど、幅広く執筆している。活動拠点は地球上ならどこでも。

なんてカッコよく言ってみたものの、日々締め切りに追われ、深夜にうなりながら文章をひねり出す・・・そんなことは日常茶飯事。2ヶ月ほど旅にも出れず東京でビルと人の群ればかり見ていたら、心からすっかりときめきが消えていた。

そんな私の目に飛び込んできた、福岡県柳川市の「さすらいワーク」プロジェクト。3週間にわたって柳川市に滞在し、柳川の魅力を記事として発信する仕事だ。

過去に2度福岡を訪れ、すっかり福岡が大好きになっていた私は「これだ!!!」と大興奮。気合を入れて申し込み、幸いなことにオファーをいただくことができた。

いざ柳川へ!今と昔が程よく融合する趣のある街

成田から福岡空港までは飛行機でおよそ2時間。久しぶりに味わう高揚感を抑えきれず終始ワクワクしながら、さらに電車で西鉄柳川駅へ。空港から1時間少々の乗車を終えて到着すると、柳川市役所・企画課の野口さんと宮部さんが満面の笑みで歓迎してくれた。

城下町として栄えた柳川は至るところに川が流れ、とにかく神社が多い。昔ながらの造りの家も残っていて風情たっぷり。「ロマンチックな街だなぁ」それが最初の柳川の印象。

ただ最近は駅前を中心に開発が進み、大きなホテルやマンションも徐々に増えているそう。なかでも2015年に新しく生まれ変わった柳川駅は、ハイセンスでなんとも絵になる。グッドデザイン賞を受賞した事実にも思わず納得。

さっそく野口さん、宮部さんと共に今回宿泊する移住体験施設「もえもん家(ハウス)」へ。昭和55年に建てられた古民家を柳川市がリノベーションしたというこの物件。

間取りは2DKでモダンな和室に広々したキッチン、最新の設備を備えた浴室やトイレと至れり尽くせり。一人でここを占拠できるなんて嬉しすぎる!

駅から徒歩20分弱とやや距離があるが、道路の向かいには24時間営業のコンビニがあり、自転車が常備されているのでとくに不便は感じない。

駅前はスーパー、薬局、TSUTAYA、レストラン、居酒屋などが揃っていて、日用品の調達は十分済ませられる。さっそく買い出しに出かけると、どこを切り取っても様になる柳川の景色に目が奪われ、なんだか浮かれてしまう。

「きっと、ときめきに溢れた3週間になる」、そんな確信に近い予感を胸に眠りについた。

歴史ある城下町と心温まる人々、ときめき復活の兆し

柳川に到着して2日目、柳川市役所のみなさんと今回の取材でお世話になる「柳川暮らしつぐ会」のみなさんが、心尽くしの歓迎会を開いてくれた。

柳川市に面する有明海で獲れる「クチゾコ」の煮付けや有明海のエイリアンこと「ワラスボ」のエキスが配合されたサワーなど、関東ではお目にかかれないメニューに興奮気味。

エイリアンエナジーは美味しいかどうかと言われると微妙だが、お腹の底からパワーが湧いた(気がした)。「クチゾコは舌平目だよ」と教えてもらう。靴底に形が似ていることからこう呼ばれているそうだ。家庭的な味付けにホッとする。

柳川のみなさんは、とにかくフレンドリーでやさしい。「小林さんの感性で柳川の魅力を見つけてほしい」、「とにかく楽しんで」という言葉に、ほんの少し抱いていた不安を温かく包み込んでもらった気がした。

柳川暮らし3日目、柳川暮らしつぐ会の島田さんと、北原さんに市内を案内してもらった。暮らしつぐ会のみなさんは“柳川で大切にしてきた暮らしにまつわるモノ・コト・ヒトを伝えつないでいく”ために、平成27年9月から活動しているそうだ。

まずは、柳川の名産品「福岡有明のり」が養殖されている有明海へ。柳川がのりの産地であることを、私はこのプロジェクトに参加することになって初めて知った。

有明海では見渡す限りに支柱が立つめずらしい景観を眺めることができる。久々に見る海に心が解けていく。自然がくれる恵みはやはり偉大だ。

続いて、商店街を巡りながら挨拶回り。会う人会う人、ほんわかした柔らかい雰囲気の人ばかりで癒される。都会にはやたら早口で無表情な人もいれば、異常なほどハイテンションの人もいる。水と緑が豊かでのどかな環境に身を置くと、人は穏やかになれるのかもしれない。

市内を回る途中、ピカピカの川面に自然が映し出された美しい景色にも遭遇。海とはまた違った趣があり、水郷・柳川の魅力に圧倒される。この景色、独り占めしたい!

執筆が煮詰まったとき、私が眺めたいのはまさにこんな風景だ。都会で仕事に追われ厚い雲に覆われていた心に、木漏れ日が差し込んできた気がする。これは「ときめき」復活の兆しかも。

柳川暮らし4日目からは日常生活がスタート。市内の電気屋に行くついでに、JA柳川農業祭りに立ち寄ってみた。子供からお年寄りまで賑わっていて、「ザ・地元の祭り」といった感じ。

小麦粉を練ってちぎった平らな団子をに入れた郷土料理・だご汁や焼きそばなどの出店が並び、採れたての新鮮野菜も低価格で購入できる。こういう地元ならではのお祭りがあるのって素敵だ。

柳川暮らし7日目、思いがけない出来事が。用事があって柳川市役所を訪ねたところ、なんと柳川の市長さんと面会させていただけることに。ニッコリしたやさしい笑顔がトレードマークの金子健次市長。まさか市長さんから「がんばって」と激励の言葉をいただけるなんて。さらに、一番高級な「福岡有明のり」のプレゼントまで。

柳川市は「おもてなし柳川」と掲げ、訪問者が心温まる街を目指しているとのこと。「そうか、この市長さんの想いも柳川のみなさんのやさしさを生み出していたんだ」と腑に落ちた。

その日の夜いただいたのりを食べてみると、ギュッと詰まった磯の風味の豊かさにご飯が進んで仕方ない。「のりってこんなに美味しかったっけ?」。柳川暮らしつぐ会のみなさんが「柳川ののりは都会ののりとは違う!」と熱弁していたワケがやっとわかった。

伝統行事「さげもんめぐり」で町一帯が華やかなムードに

柳川暮らしも10日を過ぎた2月12日、1年のなかで一番柳川が華やぐ季節がやってきた。伝統的なひな祭り「さげもんめぐり」だ。

この日を皮切りに4月3日まで、柳川にはカラフルな吊るし飾り“さげもん”があらゆるところにお目見えする。

町中をあげて盛り上がれるイベントがあると、地域に一体感が生まれそう。初日は「おひな様始祭」としてパレードが行われる。興味津々でスタート地点の日吉神社へ。

そこにはおひな様の登場人物に扮した地元の人々や、水の精と呼ばれるキャンペーンレディ3人組、市長さんや市役所の職員、地域住民の方々、そして観光客でごった返していた。

まずは神社にて歌や踊りが披露され、みなで成功を祈る。巨大なおたふくの門をくぐったら、外では女性による太鼓のパフォーマンスも。柳川の女性たちのパワーみなぎる姿に元気をもらった感じ。

その後は、着飾った面々が派手な山車に乗り込み、市内をパレード。至るところで住民のみなさんが手を振りながらパレードを見守る。地域に根付いた催しなんだなと、しみじみと実感。

ドキドキとワクワクが同居した表情の女の子たちが、なんとも愛らしい。

笑顔が眩しい水の精。私も柳川に住んでいたら、あと10数年若かったら、水の精になってみたかったな・・・と物思いにふける。

カメラを向けると、子供たちも時々目線をくれるのが嬉しい。

こっちに来てからものすごくお世話になっている柳川暮らしつぐ会の島田さんは、主役のおひな様役。最高のスマイルをいただき、心がほっこり。

3週間の柳川滞在のうち、半分を終えて心惹かれたのは、水と緑が織りなす景観の美しさに穏やかで心温まる人々、生活に息づく伝統文化、そして田舎すぎず都会すぎず、程よく肩の力を抜いて暮らせるところ。

正直、東京で受けた仕事をかなり抱えた状態で柳川に来た私は、深夜まで執筆に追われクタクタになる夜が何度もあった。でも翌日、街の風景を見るとそれだけで心がリセットできた気がした。

柳川の旅はまだ半分残っている。あと12日間で、私はどんな「ときめき」をキャッチできるだろうか。

To be continued・・・

柳川「もえもん家(ハウス)」での移住体験はこちら

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