3年前に朝の連続ドラマ『あまちゃん』で、海士・海女(あま)の暮らしや生き方が広く知られましたが、私は南房総へ移住して初めて、それを仕事にしている人に出会いました。
南房総市富浦町に住む高木さん(73)は、海生まれ、海育ちの生粋の地元人。昔のことから現在、未来まで…お話を聞いてみました。
(地元訛りは一部直してあります)
子どもの頃のことを聞かせてください。
小さい頃から海に潜って採るのは好きだったけんね。親が漁師だったから、海に潜るのは当たり前だった。大房(※)は毎日潜りに来たよ。当時は今みたいに真ん中に道なんか走ってなかったから、岬の北の岩場を歩いたり途中泳いだりしてぐるっと南へ回って、貝がとれる浜まで行ったよ。浜までちょうど家から40分。6年生頃には採り方を覚えた。サザエ、アワビ、ウニなんか採ったね。
※大房…南房総市多田良にある「大房岬」のこと。かつては民営地だったが、60年前に「南房総国定公園」となり公園化の整備が進められた。現在は広さ約40haの森と海を有する県立公園として人々に憩いを提供している。
海士になったのはいつから?今はどんな風に漁をしているんですか?
ずっと大工の仕事をしてたから、その時は年4,5回しか潜らなかった。10年前に大工をやめて、親父の漁業権を引き継いで、大房の海に潜っている。
漁をしていいのは、毎年4月後半の大安の日から9月15日まで。その年によって採っていい貝の種類と時期を地域の海士組合が決めている。今年のトコブシは5月だけ、とかね。採ったものは富浦漁協へ卸しているよ。
最近の海、変わったことはありますか?未来について思うことは?
昔に比べて全体的な収量は少なくなっている。今年はワカメが全然ダメだったし。貝類が減ったのは、餌になる海藻のカジメがなくなったからだろうね。温暖化の影響かね。
あとは昔と違ってウェットスーツがあるから、長い間海に潜っていられるのも、乱獲につながっているかもしれない。
この先?若い海士は結構いるよ。海士だけって人はあまりいない。夏は海士をして、冬には男は漁師、女は花づくり、という感じで兼業している。こんな仕事の仕方が続いていくんでないのかね。
まとめ
高木さんは漁があってもなくても、ほぼ毎日大房の公園を歩いているとのこと。「小さい頃からここへは毎日遊びに来てるからさ。暇だからよ」と笑います。「いつまで海士をするんですか?」と聞いたら、「病気するまで潜りたいね」との答え、そして「泳いで採るの、好きだけんね」と。
今回のインタビューを通じて、飾り気のない言葉と人柄の裏に高木さんの生き様を見た気がします。とても自然に“好きなことを仕事にする”を実践している方。南房総に来て、そんな気持ちの良い方にたくさん出会います。