2019年3月24日、東京・千代田区のシェアスペースNagatacho GRiDにて「地域フリーランス働き方会議2019 〜ローカルリーダー・開花宣言 in 東京〜」が開催されました。

参加レポート第2回目は、前回の和気町・赤磐市に続き、奈良県奈良市・千葉県南房総市のローカルリーダーによる実践報告と提言をシェアします。

奈良市:ママフリーランスを孤独にさせない居場所づくり 

発表に立った地域ディレクター・伊藤愛さんは2児のママ。現在は家業のいちご農家を手伝いながらフリーランスとして活動していますが、結婚までは正社員として働いていたそうです。

「もう一度、仕事を通じて誰かに必要とされたい!」と、自分らしい働き方を模索してクラウドソーシングと出会い、独学で頑張ってきました。しかし、伊藤さんの周囲ではクラウドソーシングの認知度はまだまだ低く、ましてやその仕組みを使って働いている人など皆無。とても孤独な状態が続いていたと言います。

そんな経験が、『スクット』ディレクターとしての目標「受講生全員そろって卒業!」に繋がります。自らが経験した孤独感を受講生には味わってほしくないという、強い想いがそこにはありました。

しかし、1・2期生は約1割が離脱してしまいました。理由はさまざまでしたが、受講生たちの不安をしっかり拭いきれなかったことがいちばんの原因だと感じた伊藤さんは、受講生のサポート体制の強化に取り組みました。

自らの体験をもとに課題解決に取り組む、奈良市 伊藤さん

自らの体験をもとに課題解決に取り組む、奈良市 伊藤さん

3期目では、受講生と運営陣をつなぐ身近な相談役としての地域ディレクター・チューターを1・2期生から採用。「もやもやを解消する会」(もや会)を設けるほか、チャットワークなども使い、いつでも悩みや不安を相談できる仕組みを整えました。また、毎回の講座の席順も工夫。受講生それぞれのスキルやパーソナリティ、境遇などを考慮して、まんべんなく交流できる環境をつくりました。

そうした取り組みが実を結び、3期生では全員が揃って卒業!受講生からは「みんなと進めることで『私にもできそう!』と思えるようになった」「みんなに聞ける、という雰囲気が温かく心地よい」といった声が聞かれ、講座が受講生たちにとっての大切な「居場所」となっていたことが窺えます。

これまでの受講生が全員子育て世代だったという奈良市。伊藤さんは、ママたちがコミュニティを維持しながらフリーランスを続けるためには、託児付きのシェアオフィスやコワーキングスペースが必要だと訴えました。

「家」でもなく、子どもが入れない「職場」でもなく。目の届く場所に子どもがいながら、仲間と集まって仕事ができる。そんな「第三の居場所」が今、望まれています。

南房総市:「新しい働き方」で住みたい場所に住める未来を

温暖で風光明媚な南房総市は、東京から車で約1時間半。首都圏の人々にとっては身近な観光スポットとして知られるまちで、都会との二拠点居住を楽しむ人も多くいます。

発表者のフジイミツコさんは移住者として南房総にやってきた方で、現在はライター・カメラマンとして活躍しています。1期目の『スクット』受講後、2期目で地域チューター、3期目では地域ディレクターを務めました。

観光地として人気の南房総市ですが、実は人口減少率、少子高齢化率は千葉県内トップ。求人倍率2倍ながらも、そのほとんどは介護福祉系やサービス業で、人気の高い事務職などデスクワークの求人はとても少ないのが現状です。そのため、都会への人口流出が止まらない状況となっています。

「都会に近い南国の移住地」として、住む場所としてのポテンシャルは高いけれど、働く場所はない。そんな南房総にぴったりだったのが、自分の好きな土地にいながら仕事ができる、クラウドソーシングを使った働き方でした。

南房総市での取り組みについて説明する藤井さん

自らも移住者でありながら南房総市での新しい働き方を実践する藤井さん

新しい働き方講座『スクット』に集った受講生たちは、皆それぞれに成果を出していきました。月10万円を稼ぐ本業ライターや、半農半クラウドソーシングで稼ぐびわ農家ランサー、禁漁期をクラウドソーシングで稼ぐ時間に変えた海女さんランサーなど、即戦力となるランサーが続々と誕生したのです。

卒業生たちが力をつけたことで、『スクット』2・3期の運営はすべて地元スタッフの手でまかなえるまでになりました。さらに、有志が「TEAM南房総」を結成。南房総の魅力を伝えるWebメディア「南房総ex-press —みなぷれ—」を運営するほか、自治体や地元企業からの仕事受注の窓口ともなっています。『スクット』卒業生が集い、学び合う場としても機能しており、自走する地域フリーランスコミュニティとして注目すべき事例と言えるでしょう。

自分たちで仕事をつくり、好きな場所に住み続けたい。そのためのひとつの解を、南房総市の事例は示してくれているように思います。