なにをするにも便利、日々の暮らしが充実した大都会神戸で暮らしていた女性は、ひょんなことから北海道の中でも寒さの厳しい天塩町へと移住しました。

慣れない北の大地でどんな暮らしをしてきたのでしょうか。「新しい働き方セミナー」で出会ったクラウドソーシングを活用しデザイナーとしての活動しながら、季節で楽しみを見つけて趣味を満喫している女性Aさんにお話を伺ってきました。

「田舎暮らしいいなぁ」とは思っていたけれど
ご主人の一言で移住!

新婚旅行で北海道に訪れたことがあるというAさん。天塩町移住のキッカケは、まさかのご主人の一言だったといいます。

三浦ー 移住のキッカケを教えてください

Aさんー 「昔から、田舎暮らしいいなぁとは話していたんですよ。でも、ある日突然主人が『ここに住もう』って言い出したんですよ。『移住したいんだけどどう?』とかではなく、もう決定事項というような。それがキッカケで移住しました」

三浦ー 「大都会からの移住、しかも北海道ということで率直にどう思いましたか?」

Aさんー 「北海道には新婚旅行で行ったことがあったので、好きだとは思っていました。でも、そもそも天塩町ってどこなの? と、まず地図で探しました(笑)。当時、小学生の子どもがいる世帯を対象にした移住支援の制度が天塩町にあって、その制度を利用して移住しようと。自分はともかく、子どもたちは環境が一気に変わるので大変だったと思います」

Aさんの自宅周辺は、まさに北海道の大自然を絵に描いたよう。

天塩町役場などがある中心部から車で30分程度の距離にある場所です。まさかご主人の一言で移住することになるとは…その行動力に驚きです!

セミナー受講以来、スキルがあったデザインのコンペに積極的に応募する日々

神戸ではデザイン会社にお勤めだったというAさん。天塩町に来てからは、教育委員会を通じ青空教室として地元の小学生にイラストを教えたり、目の錯覚を利用したトリックアートを披露したりしていたそう。そんななか、たまたま目にしたチラシからAさんは在宅ワークをはじめるキッカケを得たのです。

三浦ー 「新しい働き方セミナーが開催されると知り、どんな思いで参加してくださったのですか?」

Aさんー 「チラシで知りました。前々からインターネット環境を利用してもう一度、仕事としてデザイン・イラストを描こうと思っていたので、やり方を教えてもらえる! と役場に参加したいと電話しましたよ」

三浦ー 「以前はデザイナーをされていたそうですが、新しい働き方セミナーのライター講座を受けられる際、なにか不安に思っていたことなどありますか?」

Aさんー 「そもそもわたし自身パソコンの操作が遅いを思っているので、ついていけるか心配でした。今回のセミナーはWEBライティング講座でしたが、ライターの仕事にも興味はあり、過去にライターとして年に4記事程度執筆していたこともあったので抵抗はなかったです」

セミナーを受講後は、ライティングの課題に積極的に取り組みつつ、デザイナーの経験を活かしてデザインのコンペに提案を続けているとのことでした。応募実績はなんと、およそ200作品にものぼるんだとか!

Aさんー 「ペンタブを一昨年購入してから、一生懸命練習をしてとにかく触って、チラシやポスターのデザインからイラスト、ロゴなど『あきらめたらアカン』の気持ちで提案し続けました。当選が無く、これでいいのかな…と思ったときにふと書いたデザインが当選したんです。修正依頼がきて、1日で対応をして、無事納品しました」

仕事場でパソコンに向かうAさん。仕事道具が揃っていて、筆者もうらやましいと思う素敵な作業環境でした。

三浦ー 「不撓不屈の精神で、諦めずやってきたということがわかりました! 今年以降はどんな気持ちで取り組んでいこうとお考えですか?」

Aさんー 「クライアントによって、イメージが定まっていたりいなかったりしますよね。依頼詳細を見て、『これなら描きたい』と思ったものに取り組んでいこうと思っています」

当選しない間、色々な思いがよぎったことでしょう。筆者も提案が通らなかったり、クライアントの希望通りの納品物が用意できなかったりするたびに悩み、そして一人落ち込みます…在宅ワーカーあるあるともいえる心理ですよね。諦めない気持ち、提案を続けるという意志…これはフリーランスに必要なマインドといえるのではないでしょうか。

車中泊の旅、フローズンアート
天塩町でご主人と趣味を満喫し、生きる

天塩町は、冬の冷え込みが激しく、積雪が北海道の中でも多い地域です。そんな厳しい気候と共存し、そのなかで楽しみを見つけているAさん。受講生の中で話題となったのが、Aさん特製のフローズンアートです。

冷え込みが厳しい地域で、濡れたタオルが棒になる映像を見たことはありますか?その要領を応用して、様々なモノを凍らせて飾り、楽しんでいるのです。時間がかかったと教えてくれたのが、カップ麺のフローズンアートです。

カップ麺も凍るの!?と驚きを隠せません。筆者も同じ北海道出身ですが、それでも驚いてしましました。天塩町の冷え込みの厳しさが伺える一枚です。

取材に伺った当日にも、玄関先に素敵なフローズンアートを用意してくださいました!

ご主人とAさんのデニムを凍らせた作品です。

Aさんー 「始めた当時は『これ凍らせたいな』と思ったものを楽しんで凍らせていました。段々と、綺麗に凍らせたいという気持ちが生まれ始めたと当初は平面的だったのですが、何度もやって今ではちゃんと立体的に、実際にジーパンが立っているような見た目に作れるようになりました」

触ってみると本当にカチカチ! 凍らせている最中は支柱を立てているそうですが、凍ったあとは支えがなにもなくても溶けるまで完全に自立し続けるといいます。厳しい冷え込みの天塩町で、その気候の特性に順応した楽しい趣味を見つけていることがわかりました。

Aさんー 「今は、主人と車中泊の旅も楽しいですよ。車でぐっすり眠れるようマットレスでフラットにして、北海道内をぐるっと旅行しています」

大都会で培ったデザインスキルを天塩町でも活かし、クラウドソーシングで活躍しているAさん。移住先である天塩町で趣味も仕事も充実した毎日を送っていました。最後にAさんに、天塩町に移住を考えている方に一言いただきました。

Aさんー 「計画も下準備もなしで移住をし、もう20年以上経ちます。天塩町で暮らして感じたのは、町民の親身さ、親切さです。買い物の不便さや学校の少なさ、大病院への遠さは正直感じましたが、顔見知りになった町民の温かさはやはり都会では感じられないかけがえのないものだと思います」

仕事だけの付き合い、隣にどんな人が暮らしているのかもわからない関係…顔色を伺い、言いたいことも言うべきことも言えない暮らしをしているという人も少なくない現代社会。忘れかけていた「人が在るべき姿」があり、心穏やかに暮らせる場所が天塩町だということがわかりました。