長崎県西海(さいかい)市、長崎県壱岐(いき)市、宮崎県椎葉村(しいばそん)、鹿児島県徳之島町(とくのしまちょう)、鹿児島県奄美(あまみ)市、北海道天塩町(てしおちょう)、岡山県和気町(わけちょう)・・・桂浩一さんが2017年から2018年にかけて「新しい働き方講座」(以下、スクット講座とします)の講師を務めた舞台です。今では、生まれ故郷の福岡を拠点に充実したフリーランス生活を送る桂さんですが、実はこれまでに2度の大きな挫折体験がありました。

その体験を経て選んだフリーランスという働き方、また地方都市・田舎で働くことのメリットや可能性についてお話をうかがいました。

勝ち組サラリーマンから2度の転落!
フリーランスとして故郷で再生

ーーサラリーマン生活が長かったとお聞きしていたのですが、役員を務めるほどご活躍されていたのですね?

「大手情報会社でビジネスマンとしてのスタートを切り、『30歳までに年収1千万』をめざしてキャリアアップを図っていました。今でいう意識高い系のサラリーマンだったんです。

その後外資系ITベンチャーのマネージャーとして猛烈に働いて、32歳で『年収1千万』を達成しました。ところが、突然会社が倒産しました。」

ーー倒産!? それはまた驚きですね。外資系の会社だと「ある日急に」だったのでしょうか?

「後から思えば予兆はあったのですが、その時はまさに『ある日突然』と感じました。再就職先を探すのは難しく、前職に近い条件で受け入れてくれるところは皆無。それまで天狗になっていたので、気分はどん底です。

条件を落としてやっと決まった就職先で、今度は『40歳までに役員になる』と目標を決めて奮闘。42歳でその目標を達成しました。ところがその翌年、リーマンショックのあおりで業績が極度に悪化し、リストラされました。」

ーー役員になった翌年、リストラですか!? 

「役員だったので自分にも責任の一端はあるわけですが、やはり内心、忸怩(じくじ)たる思いがありました。2度目のどん底です。その時に『独立』ということが頭に浮かびましたが、当面の生活費の不安もありいったん非正規雇用で働くことにしました。」

ーー会社役員という立場から一転し、非正規雇用でのワーカーになられたのですね。大変だったのではありませんか?

「もうぼろぼろで。月収14万円だった時期もありますし、引越し会社で作業員の仕事をしたこともあります。ランサーズに登録したのは、ちょうどそんな時で本当に『藁にもすがる思い』でした。2015年3月のことです。」

ーーその時はまだ、フリーランスとして生計を立てることは考えていらっしゃらなかったのですね。

「まだ、全然考えていませんでした。ランサーズに登録しても最初の2、3か月は月に2万円程度の収入でしたし。

本音を言えば、とにかくもう東京から逃げ出したかったんです。福岡に帰ってもどうなるか分からないけど、いざとなったら工事現場で働いて日当を稼げばいい。なんでもしようという気になって東京を離れました。」

ーーその追い詰められた気持ち、分かります(笑)。

けれども福岡に帰られてからランサーズを通してクラウドソーシングのお仕事が少しずつ軌道に乗ったわけですね?

「そうですね。簡単なタスクからはじめて、徐々にいろいろな仕事にチャレンジしました。どの案件も手を抜くことなく大切に、丁寧に仕事をしているとクライアントから高評価をいただけるようになりました。それがやりがいに結びつき、また仕事につながる、という良い循環が生まれました。」

スクット講座を通して「地方」の熱気と可能性に感動!

ーースクット講座に関わったきっかけは?

「ランサーズの地方創生チームのスタッフから『講師をやってみませんか?』とお声がけいただきました。講座の内容を聞いて、自分の経験が役に立つかも、と思って引き受けました。」

ーー実際に講師を務めてみて、感想は?

「地方の人たちとつながりを持つことで、自分の視野が広がりました。東京で仕事をしていた頃は『地方』といえば過疎化をはじめとするマイナスイメージしかありませんでした。

ところが実際に地方に行ってみると地元を活性化しようという熱い思いを持つ人たちが、驚くほどたくさんいました。地方自治体のスタッフの中にも、受講生の中にも。その熱気が伝染し、『自分もできるかぎりのことをしたい!』と思うようになりました。」

営業活動ほぼ不要のありがたさ!
地方都市の仕事は人つながりでやってくる

ーースクット講座は、地方都市や都市から離れた田舎で開催されています。地方都市や田舎に住んで仕事をするメリットはどのようなところでしょうか。

「『ハレとケ』という言葉がありますよね。なんといっても東京はハレの文化のクオリティが高い。音楽、学術、芸術、エンターテインメント・・・。

けれども『ケ』、日常生活のクオリティはどうでしょう。

住まい、食べ物、生活環境・・・どれをとっても地方都市・田舎のほうが、大都市よりコストは低く、クオリティが高い。その中で働けたほうが生活しやすいと思います。」

ーー『地方には仕事がない』という声をよく聞きますが、地域の中ではどのように仕事を広げていったらよいでしょうか。

「福岡は地域の活性化に結びつきやすい要素がたくさんあります。そもそもベンチャー精神というか『自分で仕事をはじめよう』という志向を持った人が多く、『紹介の文化』が発達していて、仕事は人の紹介を通して入ってきます。

フリーランスとして仕事をしやすい土壌といえるでしょう。人つながりで仕事をする傾向は、他の地方でも同じなのではないでしょうか。福岡に帰ってきてからは、これといった営業活動はしていません(笑)。」

ーー現在は、福岡でどのようなお仕事をされているのでしょうか。

「地元では主にライター、カメラマンの仕事をしています。同時に各地でスクット講座の講師を務めていますが、今年から地域の活性化に関わる仕事がもう1つ増える予定です。」

法人化目前! 人生、意外となんとかなる

ーーこれからの展望をお聞かせください。

「最初に勤めた会社が倒産、次に役員まで務めた会社からリストラ。こういう『自分の努力ではどうにもならないところで成功・失敗・自分の先行きまでもが決まってしまう』生き方はもう嫌ですね。

成功しても失敗しても『それは自分の責任だから仕方ない』と思えるような身の振り方をしたい。今年の6月に法人化する予定です。

これまでやってきて思うことは『人生、意外となんとかなる!』。」

ーー2度の大きな挫折体験から、新しい働き方を選択。故郷、福岡で充実した生活を送る桂さん。これからも全国各地で新しい、自分らしい働き方をめざす人たちのお手伝いを続けてくださいね!

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井上美奈子
「自分が自分のボスであること」がモットーです。長らく東京でOLをしていましたが、2014年に東京から南房総市へ移住。今は、パソコン教室、事務代行、ホームページの作成、家庭教師などをしつつWebライターで生計を立てることをめざしています。
ライターの仕事を通してこの地域はもちろん、世界中の人々とつながって生きていきたいと思っています。趣味はブログ、ヨガ、読書など。
(Webサイト)
◆南房総極楽日記 ~Good-by 東京 Go Go 和田町!~
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