2019年3月24日、東京・千代田区のシェアスペースNagatacho GRiDにて「地域フリーランス働き方会議2019 〜ローカルリーダー・開花宣言 in 東京〜」が開催されました。
参加レポート第3回目は、和気町・赤磐市 そして奈良市・南房総市に続き、長崎県西海市・山梨県甲州市のローカルリーダーによる実践報告と提言をシェアします。
西海市:日本初!大人のための生涯学習プログラム
西海市は、五島灘(外海)と大村湾(内海)の美しい海と山々に囲まれたのどかな地域。長崎県内でも有数の新鮮な山海の幸が揃う、食材の宝庫です。発表者の地域ディレクター・拝崎麻衣さんは、家業の料亭を手伝いながら、カメラマン・ライターとして活躍しています。
西海市では昨年、『スクット』1・2期卒業生たちの「もっと学びたい!」の声に応える全国初の試みとして、大人のための生涯学習プログラム「SAIKAI ACADEMY」が行れました。
これまでの講座との違いは2つ。ひとつめは、講座の内容が毎回違うことです。ライティング、動画・撮影、SNS活用、ワークショップ運営など、豪華な講師陣が全7回、毎回違う内容の講座を提供しました。ふたつめは、卒業制作とプレゼン大会があることです。毎回の課題提出がない代わりに、最終日にプレゼン大会を開催。その日に向けて受講生自らが企画・制作を行いました。
初めての試みのため、受講生がどれだけ集まってくれるか不安な面もあったと拝崎さんは言いますが、過去最多となる22名でスタートを切ることができました。受講生の満足度も高く、「学んだすべてを活かしてアウトプットできる機会があり、自信につながった」「卒業制作によって受講生それぞれの活動がわかり、今後に結びついていく気がした」といった声が聞かれました。
すぐに役立つ多彩な講座は、受講生それぞれが自分の強みや才能を見出す契機ともなりました。スマホ動画講座で学んだスキルで、YouTubeチャンネルを開設した人。ローカルメディア「ばりぐっど」でライターデビューをした人。まったくのPC初心者から、自分のお店のHPを開設した人・・・。「SAIKAI ACADEMY」によって、数々の才能が花開いたのです。
「最強のローカルクリエイター集団を目指す!」と宣言した拝崎さん。これからも実践的な学びを継続してどんどん形にしていき、それぞれの仕事として収入につながる仕組みを作っていきたいと話しました。
甲州市:襲いかかる難問の数々。突破口となったのは・・・?
ローカルリーダーによる課題解決の提言、ラストを飾ったのは甲州市の三森望さん。三森さんは2018年、甲州市で1期目の『スクット』受講中から「地域ディレクターをやってみたい!」と手を挙げ、それを実現しました。現在は、実家のぶどう農家を手伝いながら、フリーランスとして精力的に活動を続けています。
甲州市では、これまでに2期の『スクット』が開講されました。1期の修了の段階で、三森さんともう一人が中心となって自走集団「甲州KULAS」を結成。さらに全国的にも珍しい、市が運営するコワーキングスペース「シェアオフィス甲州」も誕生し、『スクット』受講生の快進撃は約束されたかに見えました。
しかし、三森さんたちを待ち受けていたのは3つの危機でした。
▼事件その1:衝撃!甲州KULAS解散の危機!
ライターチームを作ったはいいものの、「なんとな〜く、ゆる〜く」結成されたため、「バリバリ稼ぎたい人」と「そうでない人」の温度差が顕著に出てしまい、結成1年にして早くも空中分解の危機が訪れてしまいました。
▼事件その2:悲劇!シェアオフィス甲州利用者ほぼゼロ問題!
鳴り物入りで完成したシェアオフィス甲州ですが、閑古鳥が鳴く日々が続くことに…。そもそも、クラウドソーシングの認知度が低かったうえに、1年目の受講者は育児真っ最中の主婦も多く、シェアオフィスを利用するほどの時間も仕事もなかったのが現状でした。
▼事件その3:嗚呼!受講生超絶受け身状態!
受講生が「市が主催」ということに安心してしまい、仕事やスキルなども「与えられるもの」と思っている人が多かったとのこと。
そんなピンチの中、2期目の『スクット』がスタートしました。そのカリキュラムの中に、この暗雲を切り抜ける糸口があったのです。
それは、2期目から始まった「目標設定」の授業でした。自身のなりたい姿を思い描き、その姿と現状とのギャップを埋めるために何をするべきか考えるというものです。「なりたい自分の姿を明確に持つ!」ということが、数々の難問解決の突破口となりました。
空中分解の危機にあった「甲州KULAS」は一度スクラップ&ビルドをし、「自走できるワーカー集団になる」という共通のビジョンを持ったメンバーによって「新生・甲州KULAS」として再出発しました。何かあれば「シェアオフィス集合!」が合言葉となり、シェアオフィスも活気を取り戻しました。
そして現在、「甲州KULAS」はローカルメディア運営を担うまでになりました。移住促進ポータルサイト「甲州らいふ」のコンテンツ制作を市から受注したのです。
甲州市のストーリーは、「なりたいビジョン」を明確にすることの大切さを教えてくれました。