「府中」という地名は、全国いたるところにありますが、みなさんその名前の由来はご存知ですか?

縄文遺跡から明治時代の建物まで、歴史が凝縮された町

府中というのは、もともと国府があった場所に残っている地名なのだそうです。国府とは、奈良時代から平安時代に政務を執る施設(国庁)が置かれた都市で、日本全国にありました。それらの土地が、府中や国府(こくふ・こう)といった名前で現在も残っているのです。

ですので府中は昔、備後の国の国府だったといわれています。それだけでも大変歴史のある場所ですが、府中では奈良時代以前の遺跡も多く見つかっています。

一番古いもので縄文時代早期に作られたと考えられる行年(ゆきとし)遺跡が、上下町階見という地域で見つかっています。また備後地方南部では、多数の古墳も作られており、石棺の中からは合葬された人骨も発見されています。これらの資料は府中歴史民俗資料館で閲覧できます。

(府中歴史民俗資料館に展示されている十二単)

歴史民俗資料館の建物もまた、非常に歴史があるものです。明治時代に建てられた疑洋風郡役所で、もともとは現在とは別の場所にありました。昭和51年に道路拡幅にともなって取り壊しの準備が進められていましたが、多くの市民が建物の保存運動に参加し、その結果、現在の場所に移築して保存することとなったのです。

シンプルですが安定感のある美しいデザインで、市の重要有形文化財に指定されています。

休日は近くの山や水辺でリフレッシュ

府中は自然も近く、市内を芦田川が流れていたり、車ですぐ山にも登ることができます。亀ヶ岳は標高539.4mで、府中市で一番高い山です。登山道手前まで車で登り、歩いて10分程度で山頂に着きます。また大蛇伝説のある七ツ池は、文字通り七つの池からなりとても静かな場所です。人もほとんど来ないので、のんびり落ち着きたいときに最適です。芦田川は街の中を流れているので、昼休みにはお弁当を持ってきて河川敷に座って食べる人もいます。

中でも私が大好きになった場所は、府中市諸毛町にある羽高湖(はたかこ)という湖です。ぐねぐねと山道を車で通っていくのですが、地元の人から「夜はイノシシや鹿が出るから明るいうちに行ったほうがいいよ」と助言をもらい、予定より早めに出て夕方に宿に到着しました。湖畔には簡易宿泊施設が一軒ありますが、キャンプをする人も多いようです。

車も人もほとんど来ないのでとても静かで、なんと言っても星がきれいです!獣の出現にビクビクしながらも、湖畔で星空を一人占めしました。

朝は早起きして湖を一周散歩しましたが、昼間とはまた違った世界が広がっていました。湖面全体が鏡のように、周囲の景色すべてを映し出していて、吸い込まれそうな感覚です。昼になると青空の色や雲が映りそれもまたきれいですが、無風の朝でないと見られない貴重な一面に出会うことができました。

ものづくりが盛んな産業地帯

府中には、機械金属業、繊維工業、家具工業、食品工業など様々な産業が集積しています。府中家具は全国的に有名で、良質な素材から作られ、長く使えるよう洗練されたデザインになっています。

若葉家具株式会社のショールーム「暮らしの音のとこ」には、シンプルで木のぬくもりを感じられる製品が並んでいます。多様な材木の端材で作られたドアストッパーが入り口にたくさん置かれており、無料でいただくことができます。

多数のメディアでも紹介された自社ブランドのスニーカー「スピングルムーヴ」を製造・販売するニチマングループは、ゴム技術の会社です。府中市内のニチマン工場の目の前には、自社スニーカーの販売展示とカフェを兼ね備えた大きなギャラリーショップがあります。気軽に入ることができるので、靴を購入しなくても、おしゃれな空間でのんびりできます。若い人から地元のおばちゃんたちまで、ワイワイと靴を見たりコーヒーを飲んだりしていました。

府中の楽しい人たち

商店街から少しはずれた小道を歩いていると、古いけれどおしゃれなお店が現れます。カフェであり、ギャラリーであり、ヨガ教室やリンパマッサージのお店(スペース)もあり、隣には美容室も併設されている「季のむら」は、古い建物を店主の松岡季絵さんが自ら改修をしています。

照明のデザインをしていた季絵さんのお店の中は、ひとつひとつ違った特徴的なランプがぶら下がっています。装飾もエスニック風でかわいらしく、とても落ち着く空間です。

季のむらで働く人たち(美容師さん・デザイナーさん)はお昼時になるとカウンターに集まってきて、季絵さんお手製のまかないを食べます。私もその中に混じって、カフェのメニューにある食事を注文していただきました。少し不思議な味ですがやさしい味で、とっても美味しくて驚きでした。働いている人たちは季のむらに間借りをしている形ですが、季絵さんのごはんに惹かれてこの場所に決めたそうです。

高知県出身の季絵さんはとてもパワフルで、頼もしい人です。会社勤めをしていたときの話、海外の話、7年間お寺にいた話などを聞くと、ついつい相談などをしたくなってしまいます。いろんな人が集まってくるのも頷けます。

(季のむらに併設する美容室Tida)

また私は滞在中、カフェオープン前の朝の時間に、季のむらで開催されているヨガ教室に2回参加しました。初めてのヨガだったので1回だけの体験のつもりでしたが、季のむらの落ち着いた雰囲気と、優しい先生のつくりだす心地良い時間で、すぐに二日後のレッスンにも申し込んでしまいました。

ヨガのレッスンは、インストラクターとの相性も大事なのだと後で知りました。季のむらでヨガ教室をしている先生、ミサトさんとは、府中に来てすぐに知り合い、ご厚意でヨガを体験させてもらえることになったのです。先に仲良くなっていたからレッスンも心地良かったのかと思いましたが、どうやら違うようです。

ミサトさんのレッスンを受けている他の人たちは「今まで何人かの先生からレッスンを受けてきたが、ミサトさんのレッスンが自分に合っている。ヨガも続いている」と言っていました。私も府中にいれば、ミサトさんのレッスンに通うだろうなと容易に想像できます。

どうやら季のむらには、季絵さんを中心とした素敵な人たちが集まるようです。そしてそれは季のむらに留まらず、街にまで広がり、そういった人たちは皆つながっています。一人と知り合えば、たくさんの楽しい人たちと出会える、府中はそんな街です。

一週間の滞在で、私はきっと府中に溶け込んでいたと思います。(地元の人にもそう言ってもらえました!)それもウェルカムな雰囲気をもつ府中の人たちのお陰なのです。

 

この自治体へのさすらいワークのエントリーはこちらから受け付けています。

さすらいワーク詳細ページ