場所や時間に縛られないフリーランスは、働き方に自由がある。満員電車で通勤する苦労もないし、週休も決まっていない。一年365日24時間を、自分の働きたいようにカスタマイズできるのだ。
・・・って、フリーランスを礼賛する言葉を、最近よく見かけるような気がする。
かくいうワタクシ千葉こころも、フリーランスでライター業をしているひとり。
上の言葉、決して間違っているわけじゃない。でも、取材やインタビュー、そして執筆に駆け回る毎日を過ごしていると、ときどきふと思う。たとえ草木が眠り につく時間であっても仕事となれば稼働するし、時間にゆとりがある月は、その分収入面の不安も大きい。四六時中ネタになりそうなものはないかとアンテナを 張り、締め切りに追われるように過ごす日々は、ほんとうに“自由”なのか? と。
そんなわけで、もっとフリーランスの特権を活かせる働き方があるのではないかと思っていたところ、私のアンテナに引っかかってきたのがランサーズの『さすらいワーク』。のどかな場所に滞在しながら、地域のアレコレと触れ合いながら仕事をする、自分なりの新しい働き方を見出す試みなんだとか。大自然に囲まれれば、疲れた心も癒せるかも? とりあえず3泊4日、さすらってみることにした。
山! 田んぼ! 大自然! 南砺市でさすらいスタート!
さすらいの舞台は、富山県の南西端に位置する「南砺(なんと)市」。東京駅から北陸新幹線で3時間弱の「新高岡駅」でレンタカーを借り、40分ほど走ったら到着した。
668.64㎢の広大な敷地の約8割は森林で、岐阜県との境に連なる山々や急流河川、平野部には水田地帯も広がる自然豊かなところ。平成16年に8つの町村が合併し、それぞれの伝統や文化を守りながら共存しているという。
高い建物はひとつもなく、どこまでも広がる緑と青空。車を停めて外に出ると、思わず深く吸い込んじゃうほど空気も美味し~い!
大自然に迎えられ、これから始まる4日間に抑えきれない胸の高鳴りを感じながら、まず向かったのは南砺市役所の「南砺で暮らしません課」。南砺市への定住を促進する市民協働部で、暮らしにまつわるさまざまな支援をおこなっているそう。
富田さん「南砺市は地域それぞれに特色があるので、4日間では巡りきれないくらい魅力がいっぱいです。知りたいことや困ったことがあれば、いつでも遠慮なくお声掛けくださいね!」
千葉「何とも心強いお言葉! よろしくお願いします!」
中島さん「富山県は初めてですか?」
千葉「はい。お隣県の金沢港までは、甘海老を食べるためだけに車で訪れたことがあるのですが・・・」
中島さん「南砺市からは、富山市よりも金沢市のほうが近いんですよ(笑)。でも、富山港から新鮮な魚介類も入ってくるし、海に面していなくても美味しいものがたくさんあります」
千葉「そうなんですか! では今回は南砺市内の美味し・・・いや、見どころをたくさん教えてください!」
今回お世話になる副主幹の中島さんと 主事の富田さんから南砺市でさすらうためのノウハウを聞き、いざ、仮住まいへ!
南砺市の「体験ハウス」は市内に3か所。これまでは南砺市への移住を検討している人限定、1泊1,000円で貸し出してたそうだが、「さすらいワーク」のフリーランス向けにも開放することにしたんだそうだ。今回は城端(じょうはな)地区にある「城端体験ハウス」を筆者の城とした。立派な家屋は2階建ての3LDK。リフォームしてあるから、中はとってもキレイ。
・・・って、3日間これぜんぶ、一人じめ・・・!?
「体験ハウス」として貸し出しているのは、以前は普通に家族が住んでいた一軒家。大家族を想定して建てられているせいか、めっちゃ広い。想像以上にきれいに手入れもされているし、すぐ隣に民家があってなんとなく安心感もある。ここに1泊1,000円で泊まっていいんだろうか…と思いつつ、家の中を一周りした頃には、すっかりご満悦。ニマニマが止まらない。
さあ、ひとりで住むにはもったいないくらい贅沢な城も手に入れた。仕事もしなきゃいけないけど、せっかくここまできたんだし・・・と、冒険好きの血がうずく。食料調達も兼ねて、周辺を散策してみることにした。
スーパーに行こうとして、300年の歴史につかまった
体験ハウス周辺は緑に囲まれているものの、5分も歩かずメインストリートに出られる好立地。郵便局や城端庁舎も近く、車で5分ちょっと足を延ばせばスーパー、ドラッグストア、コンビニもあるので生活には困らなそう。
通り沿いをプラプラと歩いていたら、目の前に歴史を感じる立派な土蔵が現れた。「城端曳山会館」なるその建物では、毎年5月5日に開催され、国に重要無形民俗文化財として指定されている「曳山祭」で使われる曳山や庵屋台などを展示しているらしい。ちょっと待って、私、そのお祭り知らないぞ。ライター取材魂を押さえきれず、買い物そっちのけで中へ。
・・・なるほど。「さすらいワーク」の醍醐味が見えてきた。
“曳山”というのは高さ約6メートル、重さ7トンにもなる山車のことだ。6台の曳山にはご神像が祭られ、それぞれにゆかりある絢爛豪華な装飾が施されている。
300年の歴史を誇る曳山祭では、この巨大な曳山を30~40人の男性が曳いて町内を練り歩き、京都祇園の一力茶屋や江戸吉原の料亭などが模された庵屋台が曳山に同行しながら祭囃子や庵唄を奏でるそうだ。
修復を重ねながら今なお大切に使われ続けている曳山や庵屋台。細部まで丁寧に作り込まれた装飾には一つひとつ意味があるそうで、当時の人の教養をうかがい知ることができる。
日本全国祭りの様子は地域それぞれ。優雅で趣あるお祭りを今に受け継ぐこの地に住む人々、もっと会ってみたくなった。やばい。これまで全く知らなかった南砺市。楽しい。
はじめまして! から次々つながる出会い
周辺散策を楽しみ、地域文化に触れてリフレッシュ。体験ハウスに戻ってそのまま畳にごろん・・・と転がってみてハッとする。あれ、私なにか忘れてる?
そう、仕事もしなくちゃね・・・!
むくりと起き上がり、おもむろにパソコンを広げWi-Fiの接続状況を確認。うん、問題ナシ。
とにかく静かな環境で、いったん作業に入りさえすれば、没頭できてはかどることこの上なし。ときおり画面から顔を上げると耳に入る虫の声で、「ああ、富山にいるんだった」と気づくくらい。
そんなふうに、しばらく集中して仕事をしていると、南砺で暮らしません課の富田さんから着信が入った。なんと“さすらいワーク第1号記念”に歓迎会を開いてくれると言うじゃないか。わーい!
指定のお食事処へ出向くと店奥の座敷へと通され・・・
思いのほかたくさんのかたが「ようこそ!」と迎えてくれてびっくり。「南砺で暮らしません課」の市川課長 をはじめ、無農薬栽培をしている渡辺さん、新宿から南砺へ移住した綱川さん、南砺市の魅力発信をサポートしている直子さん。
「さすらいワーク」の話をしたところ、地域の人たちが自然と集まってくれたそう。普段、同じような生活を、同じように繰り返していたら絶対にない出会いに乾杯!というわけで、ハジメマシテの面々に囲まれ少々緊張したものの、皆さんの気さくなムードとお酒の力ですぐに和気あいあい。(飲むのは大好きです。)
綱川さんの芸術的な毛針制作もありつつ、でもやっぱりと言うべきか、聞けば地方ならではの課題も抱えているという。南砺市では高齢化が著しく、若い人の力を必要とする作業も高齢者同士で助け合ってこなしているとのこと。畑仕事や雪かきなどのほか、それぞれの地域で人手を必要としているというではないの。
元々、地域の仕事に興味もあったしライターは経験してなんぼ。お酒も食事もうまい、素朴で楽しい人たち。気が付けば声が出ていた。
千葉「農作業ほとんどやったことないんですけど、できることあれば手伝いましょうか…?」
渡辺さん「たくさんあるよ! よかったら、明日僕の畑に来てみるかい?」
どんな作業があるのか、まずは渡辺さんが所有する田んぼで教えてくれるという。
さらに、特別な技能や経験がなくてもすぐにできる南砺の仕事に詳しい人も滞在中に紹介してもらえることになった。
なんだかどんどん話が転がって、人がつながっていく。もしかして、これも「さすらいワーク」ならでは?
この自治体へのさすらいワークのエントリーはこちらから受け付けています。