大阪出身東京在住の私にとって初めての長崎滞在。

大村市ってどういうところなんだろうと思いながら飛行機に揺られ降りた場所が、すでに大村市でした(笑)

友人に大村市に行ってくると言っても、「それってどこ?」なんて返されましたが、長崎に飛行機で来た人なら全員が知っていてもおかしくない場所だなというのが初めの感想。

松原エリアは長崎空港から車で15分の場所にあり、大村市の中では北部あります。昔から大名行列が通る長崎街道の宿場町として栄えていたので、今も「松原宿」という名前が残り、民家が立ち並ぶ一帯の道幅がとても狭いのが特徴。町の奥には路線も通っていて「松原駅」があり、交通の便はいいところです。

松原エリアには海エリアと山エリアがあります。長崎街道が通っている松原宿は、海エリアです。山エリアは野岳と言われ、この辺り一帯は民家と民家の間が大きく離れており、海エリアとは少し違う暮らし方をしているようです。

松原宿の中ほどには、私が今回寝泊まりするお試し住宅の一軒家があります。
二階建てて、一階部分も4部屋とキッチンがあって広すぎてどう過ごしたらいいのかと、東京での生活と違い過ぎて戸惑いました(笑)

お盆や正月よりも大事な「おくんち」(神社編)

長崎県には「おくんち」というお祭りがあります。
約一か月かけてあちこちでおくんちを行い、最後のおくんちを行うのが松原エリアにある八幡神社です。

毎年11月の第三土曜日と日曜日に行われ、今年は17日、18日に行われました。

私が神社に行った時には、野岳のじゃ踊りが行われていて、周りにいた人たちと一緒になってみていました。

龍は写真の右にある金の玉(財宝)を追いかけているのですが、途中金の玉が消えてしまい、龍が怒りだして口から煙を吐くというもの。

写真は、踊りの終盤。怒った龍の前に再び金の玉が現れて、また金の玉を追いかけているシーン。

初めて見ましたが、とても面白かったです。この後、龍たちは八幡神社を出て松原の町にある家を一軒一軒回っていくそうです。

そして、じゃ踊りをしている横で実は、高校生の相撲大会も行われていました。本当に盛沢山の催し物だなという印象。

この日は、他県から強豪の高校生力士も来ていて、学校対決をしていました。本格的な相撲をしていていたので、この地の相撲への意欲を感じます。

お盆や正月よりも大事な「おくんち」(家庭編)

おくんちの行事は神社でだけ行われるものではありません。各家庭でも行われていました。

何と二日間の夜は、各家庭がごちそうを用意して客人を招いて、みんなで食事をとるという風習が古来より残っています。しかも、その夜に何人の人が訪れるのかがわからないので、家の人たちは料理の下準備が大変。だから、例え正月やお盆に実家に帰ってこなかったとしても、おくんちの日には親族一同が帰ってきて、宴会の準備を手伝うんだそうです。

ここに集まっているのも親族だけではなく、友だちや知り合いや会社関係の人なんかもいます。そして、集まっている人も立ち寄るのは一軒だけではなく、他の家にも立ち寄るので、東京にいる私からするとお店を梯子しているような感じです(笑)

ただ、完全によそ者の私も、お宅にお邪魔したら、みんなが受け入れてくれてお酒を進めてくれるんです。ご飯もお酒も、「食べて食べて、飲んで飲んで」と次から次へと……。

町の人とそれ以外の人で分け隔てのない態度を取ってくれる町の人に、なんだか心が洗われるような……そんな夜でした。

松原エリアに古くからある伝統工芸

松原には長崎県指定の伝統的工芸品「松原包丁」があります。

田中鎌の作り手である田中さんは、松原包丁の作り手の一人。昔は鎌が4割、包丁が6割で作っていましたが、時代の流れで今は包丁が8割~9割になってしまったそうです。

田中さんは松原包丁の作り手でも、新しいものを作って行くことに意欲的な人で、これまでなかった新作の包丁を何年かに一度作っていたり、国内の工芸品展に出店したり、海外のイベントに出展をしていたりします。

そんな田中さんなので、金工品だけではなく、様々な伝統工芸の作り手の人たちとのネットワークもありますし、全く知らない人と仲良くなるスキルも高い人です。

数年前、空いている部屋もあるということで民泊を始めました。

そこに泊まりに来た人が、この松原を気に入り、気が付くと田中さんの家で下宿をするように……何とも面白い縁を繋いでいる方です。

二拠点移住を決めたクリエイター

田中さんの工房の二階に住んでいるのは、東京で仕事をしている映像クリエイターの粂川さんです。

粂川さんは何か面白いものを撮りたいと思い、各地域を回っていました。そんな時、大村で自主映画企画があると聞き、松原に訪れたそうです。

題材を探すためには足で探すしかなく、神社、伝統工芸、芸能などを調べていたのですが、その時に使っていた宿が、松原包丁の田中さんの家(民泊利用)。

気さくな田中さんとコミュニケーションをとっているうちに、この町のことも好きになっていき、気が付くと一か月のうち一週間は松原にいるように……。そして、田中さんから10年ほど使っていない部屋があるからということで、その部屋を使わせていただくようになったとおっしゃっていました。

今では、東京での暮らしと松原での暮らしをしながら、どちらにいても仕事ができる環境に身を置いているそうです。ただ、二拠点居住という言葉ではなく、自分は田中さんの家に下宿させてもらっていると言っていて、田中さんに対する感謝の気持ちを言葉にしていました。

田中さんの話を聞いたときもそうでしたが、田中さんと粂川さんは、お互いに本当に信頼し合っている仲なんだというのが、私の感想です。

野岳からの素晴らしい景色が決めてで一軒家を購入

芳賀さんは定年後に関東から移り住んで来た方です。

自然の多い場所に住みたいと思った時に、子どもの頃に妻が一時住んでいたというこの地を思い出し、家探しのヒントになるかもと思い松原に訪れました。
この地に住む予定はなかったのですが、不動産屋にこの家を見せてもらった時、家から見える大村の景色を見て一目惚れし即決で購入。それが3年前の話です。

その後、手先の器用な芳賀さんは、自宅の五右衛門風呂を整備したり、鶏小屋を作ったり、畑を作ったり、倉庫を改築したり、囲炉裏を作ったり、ピザ窯を作ったり、隣の家の持ち主だったペントハウスのリフォームをしたりなど、様々なことを一人で行い、自分の手で済む環境を変えていっています。

また、松原の野岳の人たちとも仲良くなり、気が付けば松原伝統のじゃ踊りの伝え手として参加するように……。

とても前向きで想像力の溢れる人なので、話を聞いているだけで楽しくなりました。

やっぱり松原が好き!安心できる町松原エリア

最後に松原エリアに鎮座する八幡神社の家系である村川さんにお話を伺いました。

村川さんはこの地に生まれ育った方です。今は家庭があり、小学生のお子様もいます。話の中で面白いなぁと思ったのは、夏休み期間にだけ作られた「松原宿寺子屋塾」。小学生を対象にしたもので、写真の昔、旅館だった建物を再利用して行われています。先生は学校の先生ではなく、手芸の得意なおばあさんや、竹馬の上手いおじいさんなどが先生となり、普段の学校とは違った授業が行われています。

寺子屋は夏休みの最後の二週間に行われるのですが、子どもたちは毎年楽しみにしていて、夏休みが終盤になっても寺子屋塾を楽しみにしているのでテンションが高いままだとおっしゃっていました。

松原に長く住む村川さんに、この地のいいところは何かと聞くと、みんなに役割があるところだと教えてくれました。それぞれの立場で、今できることをして町を守っているのが松原という町。例えば、子育てを終えて少し手が空いてくると、地域のお祭りのお手伝いをしたり、お年寄りは地域の子どもたちを見守っていたりと、それぞれが無理のない程度にできることをしています。

また、小学校では、全校生徒と先生がお互いの父兄を含めて知り合いになっているというのも、子どもを持つ村川さんにとっては安心できる要素。みんながみんな知り合いなので、何かあった時には、すぐに声をかけて貰えたり、知らせて貰えたりするので、小学校単位でのお互いの見守りもできています。

子どもたちにも、知っている人にも知らない人にも挨拶をするようにと教えているようで、実際に私も小学生の女の子3人組に挨拶をされました。挨拶をすることは防犯にも役に立つそうです。

村川さんの話を聞いていると、本当にこの松原が大好きなんだなぁと心から感じ、気が付くと私も笑顔になっていました。

まとめ

今回は二泊三日で、長崎県大村市の松原エリアのお試し住宅にいさせていただきましたが、本当に温かい町だなという印象です。

ロケーションもとってもよく、松原には海も山もあって自然豊かですが、決して田舎ではありません。車を走らせると、5~15分ぐらいで、病院も警察もスーパーも図書館(建設中)もあるので生活もしやすい環境です。しかも、長崎空港まで車で15分なので、他県や離島に行くのも簡単というのは魅力的。

もちろん遊べるところもたくさんあります。おおむら夢ファーム・シュシュでいちご狩りやブドウ狩りができたり、野岳湖の公園や大村公園で遊んだり、全てがガラスの砂でできている浜辺(長崎空港近くの浜辺)でインスタ映えを狙ったり(笑)
他にも美味しいお店やカフェなんかも、最近は増えてきているそうで、若い世代にもおすすめです。

ただ私が松原エリアで感じた居心地の良さは何だろうと、ずっと疑問でした。接してくれる人たちが、温かく迎えてくれるからなのかなとも思ったのですが、それだけじゃないなと今は思います。きっとこの町にいる人が、本当に松原を好きだからなんじゃないのかな、というのが答えです。

取材が終わった後に、松原をぶらぶら歩いていると、私を覚えてくれていた人たちが声をかけてくれたのもとても嬉しかったです。東京では中々味わえない日常に溢れた町。私も粂川さんみたいに二拠点居住を考えてもいいかもしれない……なんて思いました。

まずは、ぜひ一度泊りに行ってみるのがおススメです!

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