天塩町という街をご存知ですか?読み方は“あましお”でもなく“てんえん”でもありません。“てしおちょう”と読みます。場所は北海道。日本の最北端である稚内市から、日本海側を車で1時間ほど南下した場所にあります。
私が移住体験した天塩町は、あまりにも人情味にあふれ、自然と対峙する素晴らしい環境でした。天塩町の存在を知らない方や移住を検討する方に、自分自身の2年の経験をもとに天塩町の魅力をお伝えします。
出身が埼玉県の移住者が体験した!天塩町の魅力
筆者は2016年から2年間、北海道にある天塩郡天塩町という人口3千人以下の小さな酪農の街へ移住しました。もともと出身が埼玉県ですので、手つかずの原野、広大な牧場地帯と壮大な利尻富士、日本海の荒波を臨む天塩町の景色にただただ圧倒される毎日でした。天塩町の主幹産業は酪農。人間よりも牛の数のほうが多いという、首都圏では想像もできない環境がそこにはありました。
そんな天塩町に住んでみて身についたのは、四季を通した自然との対峙(たいじ)法です。
春の訪れは遅く5月に入ってから。一面の雪景色の白から土色に包まれた荒地に野草や牧草が一斉に芽吹き、緑が広い大地を覆います。夏の風物詩はなんといっても牧場のあちらこちらに積まれた牧草ロール。牧草の刈り取りと同時に行われるロール作業用トラクターの動きは、まさにこの地でしか目にすることができない圧巻の光景です。
秋は8月下旬に早々と始まりを告げますし、冬の到来を感じる10月頃には、シベリアなどから渡ってきたハクチョウやガンたちがあちらこちらの沼地で羽を休めます。いよいよ暴風雪への備えが必要になるのは雪虫が飛び始める10月下旬ころ。日本海に面した天塩町では年間を通して風が強いです。一度嵐が始まると容赦なく町中の雪を巻き上げ、天塩町は“陸の孤島”と化します。
自然と向き合うことで、都心にいるときには全く使うことがなかった“五感”がずいぶんと鋭くなりました。天塩町の皆さんにならって自然との向き合い方・暮らし方を学んだおかげです。
移住するならこれだけは知っておきたい、天塩町での暮らし方
天塩町での暮らし方は、首都圏のように「一歩玄関を出れば、なんでもある」という考えは捨て、人間の原点に立ち帰るところから始めることがおすすめです。
まずは病院。おすすめの総合病院や歯科はありますが、診療科が都心のように豊富なわけではありませんし、生活に欠かせないスーパーひとつとっても、品ぞろえ、店舗数について「どこに行くか迷う…」という感覚はひとまず都会に置いて出かけたほうが良いでしょう。ただ、町内では外部から来た者について、皆さんが大変親切にしてくださいます。漁師さんと友達になれば獲れたての魚や貝をいただいたり、農家の方と知り合いになれば、搾りたての牛乳や牛の初乳で作った貴重な“牛乳豆腐”をおすそ分けしてくれたりと、とにもかくにも周囲に助けられる毎日です。
また、重要なのが交通手段の把握です。天塩町には鉄路がありません。天塩町へ本州から入るには、飛行機かJRにて札幌へ入り「はぼろ号」という沿岸バス株式会社が運営する都市間バスで移動するか、稚内空港からJR北海道を利用し、稚内駅から天塩町から車で30分ほどの近隣の駅、幌延駅まで特急や急行で移動する必要があります。このため、マイカーがあると移動手段が増え便利に感じるかもしれません。
このほか天塩町ではカーシェアリングシステムによって日本最北端の地、稚内市中心部の百貨店やスーパー、総合病院まで出かけることも可能です。国内最大級の中長距離相乗りマッチングサービス「notteco(ノッテコ)」と天塩町がタッグを組んだのは2017年1月。約7カ月に及ぶ実証実験を積み、天塩町から日本最北端の稚内市までの長距離ライドシェアサービスを本格始動させました。相乗りによって安く確実に現地まで往復することができるようになりました。
このように過疎化や高齢化が進む天塩町でも、さまざまな新しい取り組みを通じてそこに暮らす人々が「住みやすい」と思える環境を作り出そうとしています。このほかの情報については天塩町役場で気軽に問い合わせることが可能です。ぜひ一度HPをのぞいてみてください。
天塩町で困ったときにはここに聞け!移住や観光にも役立つ情報3選
天塩町では「五感を研ぎ澄ますことが大切」と先に記しましたが、いざ移住や観光で天塩に足を踏み入れ困ったときには、どのような手立てや解決方法があるのでしょうか。
まず第1には、天塩町での相談窓口を把握しておきましょう。天塩町の相談窓口は、天塩町役場が一番おすすめです。公式ホームページにもあるように、天塩町は現在、クラウドソーシングを利用した雇用の創出や就農支援、地域おこし協力隊の募集など数多くの事業を手掛けています。また、電子図書の導入や先ほどご紹介したライドシェアサービスなども行うことで“住みやすさ”の充実をはかっています。移住者用住宅の案内や暮らし方を含め必ず参考にできる情報を入手できますので、まずは役場を訪れてみてください。
第2は、観光に関する情報が入手できる“道の駅てしお”。道の駅てしおは、札幌・留萌方面と稚内方面を結ぶ国道232線に面しています。ホール中央に観光ガイドマップのパネルが設置されていて、一目で天塩町の観光の要所などが理解できるようになっています。また、フロントの横にはワイドビジョンが置かれ、天塩町の観光案内が映し出されていますので、生きた天塩町関連の情報を目にすることが可能です。もちろん案内係に直接聞いてみるのもおすすめ。
天塩町特産の「しじみ」が味わえるレストランや、しじみの加工品や名物「マスカットサイダー」なども購入することができる売店もありますので、ぜひ有益な情報を得るためにも道の駅をのぞいてみてはいかがでしょうか。
第3に知っておいていただきたいのは、「てしお温泉夕映やファミリースポーツセンター」の存在です。夕映には宿泊施設やWi-Fiが通じるコワーキングスペースがあるため、泊まりながら、またアンモニア臭のする茶褐色の珍しい温泉に浸かりながら天塩での行動計画を立てるなんて夢も叶います。旅行者や移住者、地元の方に愛される温泉施設では、いろいろな話を聞くこともできますよ。お土産にも最適なてしおキムチやしじみラーメンなどを買い求めることも可能です。
天塩町ファミリースポーツセンターは、地元の子供や大人たちの貴重な健康維持の場です。2階には大人が1回200円で使い放題のエアロバイクや筋トレマシーンの置かれたスペースがあり、移住者も地元の方に混じって汗を流しています。長い冬の過ごし方やさまざまな「天塩に住む」ことについての情報やアドバイスも会話をすることで入手できます。ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
天塩町の魅力は、地元の皆さんの温かさと首都圏では経験することのできない自然との共存です。人間は自然によって生かされているということをひしひしと感じることができるこの土地で、周囲の人に助けられながら新しい環境と向き合ってみませんか?自分を見つめ直すきっかけにもなるかもしれません。移住でも観光でもぜひ体験していただきたい天塩町の魅力。次はあなたが実際に足を運び、体感してみてくださいね!
(参考)
http://www.teshiotown.hokkaido.jp/
https://www.travelvoice.jp/20171106-99940
http://teshiospayubae.net/
http://www.teshiotown.hokkaido.jp/?page_id=620
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